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登場人物の人となりの描写が細やかで、かつ追求したくなるのは住野よるさんの作品ならではだと思った。

なりたい自分になるという目標をもつ秋好寿乃やあまり人に近づきすぎず誰かの意見を真っ向から否定しないようにして自分を守っている田畑楓はもちろんのこと、董介やポンちゃん、川原さんやテンの人物像を詳細に想像することができ、よりその人となりについて追及したくなる瞬間が多くあった。

私は秋好寿乃か田畑楓かでいうと、性格的に田畑楓と似通っている部分がある気がする。そのため、彼に共感することが多くあった。秋好寿乃はきらきら眩しくてかっこいいと思う(20%)反面、理想を語るなんて青くて痛いなと馬鹿にした気持ちになり(40%)、ただそんなことを思ってしまっている自分に対してとても悲観的な気持ちになった(40%)。

秋好のきらきら眩しくてかっこいい私が感動した台詞は「人見知りって能力なんだってよ」だ。自分から知らない人に話しかけることはしない私は人見知り=ネガティブなイメージとしか思っていなかった。だが、能力と言われたらポジティブに捉えられる。そう考えていくと、人間は危機管理能力だって必要であり、人見知り=危機管理能力が優れているとポジティブに考えることもできるのではないかと感じた。川原さんの言っていた距離感の重要性も、人見知りは能力であると似通っている考えだと感じた。
一方でポンちゃんが言っていた「コミュ力がありすぎる人がコミュ障」も考えさせられる言葉である。

友達としてなら董介のような友達がいい。特に彼の一度内部に入ってしっかり見てから嫌いと断言したいという性格に好感がもてる。交流会に行った時にも、楓のことを思って内心と違うことを言ったりせずに、見直した点を正直に伝える嘘をつかない性格なのもまた魅力的だ。

内部に入ってしっかり見てからといえば、楓の川原さんに対する見方にも通ずるところがある。初めは、ヤンキー女子大生と思っていたが、相手を深く知っていく中で印象が追加され多角的にみるようになり、深く知る前に比べると好意的な印象を抱くようになった。これは、董介のテンに対する見方にも繋がっていく。

何度も作中に出てきていた秋好のための、僕らの理想を取り戻すと言っていたが、楓は秋好と一緒にモアイにいたかった。何となくそういうことだろうなと予測はできた。

映画を見てから原作を読んだのだが、映画で見たときは楓の嫉妬かと思っていたのだが、原作を読むと恋愛テイストが少なく感じた。映画と原作では、秋好の元カレの出方が違うからかな?と感じた。

この作品を読んで大学時代を懐かしく思い、大学時代の友人に会いたい気持ちが募った。そして振り返ってみても秋好のような人は大学にはいなかったし、そんな理想を持ち続けられる人ってやっぱりなかなかできないことだから羨ましいと思う。